けいすけの蹴球記録

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02.空色を纏う戦士・東久留米総合. 地から始まる1年間の躍進 【#01.東京都 高校紹介】

 19-20シーズン、東京都代表として関東大会と選手権に出場する東久留米総合。

 年間で2つの大舞台に出場することは躍進と言っても過言でないであろう。

 しかしながら、2大会出場を果たしたの名門・東久留米総合、

 その代は最弱であったとチームは語る。

 そんな "最弱" の言葉を押し退け、躍進を見せた東久留米総合。

  高円宮杯U18. T(東京都)リーグの開幕前に東久留米総合の魅力を昨シーズンの動向を振り替  えながら紹介していく。

 

 私が初めて東久留米総合の試合を見たのは4月下旬の関東大会予選、準々決勝の国士舘戦である。会場の駒沢第二競技場は観客席が設置されており、その向かい側には整備されていないが、更地の応援スペースが設けられている。基本的に両校のベンチ外の選手等で構成されている応援部隊がその場で応援し、ちょうど真ん中が緩和エリアとして誰でも入れるようになっている。そこで私は試合を見ていた。勝てば東京都代表が決まる準決勝の大成戦もそこから見ていた。冒頭にも述べているが、この予選で勝ち上がった末に東久留米総合は関東大会に出場したのである。それは私が上記で挙げた2試合に勝利したことを意味する。スコアで見ると、1-0と3-2とどれも厳しい戦いを強いられたことが伺える数字であり、現に大成戦は前半に先制を許し、計2度のリードを許す展開もあった。幾度もなく訪れた厳しい展開を打開して行った東久留米総合。その勝負強さに私は惹かれて行った。 

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競り合いをする東久留米総合8番 山中君(写真 : vs 大成. 関東大会予選準決勝)

 

 “ 今年の代は最弱と言われて来た。だから反骨心で頑張り、今は結果が付いて来ている状況なので今後も周りの期待を良い意味で裏切り続けたい。”

 1つ目の躍進、関東大会の出場権獲得を得る。

 これは、国士舘戦後の東久留米総合の応援部隊の1人が発言したものである。

 “最弱” このワードに相応しくない躍進をして来た東久留米総合であるが、関東大会の出場権を得るまでの道のりも険しいものであった。

 第97回全国選手権. 東京都2次予選にて、名門・東久留米総合は2回戦で姿を消した。この結果を受け、新チームでの初陣は新人大会から始まった。当時の1,2年生を主体に構成された新チームの2年生の代こそが最弱と言われているものであった。

 ”最弱”とは。東久留米総合を率いる監督・加藤氏曰く、自身の選手にハッパを掛けたつもりの言葉から生まれたものではないかと述べている。

 

 “ やってしまった “

新人大会を優勝するも、監督・加藤氏の心情には申し訳なさを表すものがあった。

 選手権予選。早期の敗退を受けたが、それに一喜一憂している時間は無かった。所属しているT1(東京都1部リーグ)は続いて、さらには新人大会がある。加藤氏はT1での指揮に専念し、新人大会は他のコーチが指揮を振るった。リーグ戦に専念するも、新チームの梃入れは加藤氏が全うすべき仕事であるため新人大会の様子も確認しなければならない。新チームの試合が記録されている動画を見ると、そこには土のグラウンドで戦っている東久留米総合の選手の姿があった。

 T1所属だけあり、強さに比例して設備や環境の良さも魅力である。専用グラウンドも芝のものを確保し、それを筆頭にT1や公式大会予選での試合は芝で行われている。しかしながら、新人大会の初戦の舞台は土のグラウンドであった。空を基調した色のユニフォームは、空のような高いところにいれば付着しないであろう土と同色の茶色が纏っているものになってしまった。こうしたユニフォームをもう見たくないと、加藤氏は新人大会を経て再び名門の名に相応しいチームの再建に尽くすことを決意したのである。この決意に、部員230人の1人1人の胸の内に刻み込まれたであろう。刻まれた決意を胸に宿した東久留米総合の名門へ再建するのはそのすぐの話しである。

 

 “ 入学当初から自分たちの代は弱いと言われ続けて来た。 それが悔しくて皆で頑張って来たので自分たちの代になったらどんなに苦しい試合になっても勝つという気持ちを持っていた。” 

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東久留米総合7番 柳田君(写真 : vs 東海大高輪台. 選手権予選決勝)

  こう語ったのは東久留米総合の柳田君。関東大会終了後、文字通りの苦しい試合を強いられる場面が再び出てくる。 大会終了後、すぐに今度はインターハイ予選が待っていた。今度の予選は関東大会予選と対照的であるVIP待遇を受けて迎えるものである。準々決勝からの参戦であり、2連勝すれば出場権を得られるトーナメントの中で同じT1生勢の駒澤大高と試合を迎える。結果は0-3の敗戦。東久留米総合のインターハイ予選の旅は1試合のみで終幕を迎えた。試合は負けてもすぐに3度目の大舞台への挑戦。全国高校選手権の予選が始まるのである。東久留米総合の気持ちはそれに向けて調整をしているであろう。1つでも落とすと終わる、出場権を得るには勝ち上がらなければならない。そうするためにも、いかなる苦しい試合でも制す力が必要である。無論、その試合を制するために勝ち癖もつける必要もある。しかし、それを得るためのT1での公式戦では選手権予選までに控えてる5試合のうち勝利数は1だけであった。勝ち癖を付けれないまま、選手権の予選へ臨むのである。

 " 鉄壁守備陣の構築. 新たなストロングポイントを確立し、4試合ウノゼロ勝利で選手権へ "

 「41」この数字は東久留米総合の選手権予選までのT1失点数(15節まで)を表している。特に第12節.成立戦、第15節.駒澤大高戦においてはどちらも8失点で敗北している。これだけ見ると守備陣の修正を求められるであろう。そうした中で監督・加藤氏は野口君と佐藤海君の両ウイング中心に攻める戦術から、守備重視の戦術に転向し選手権予選に臨んだ。戦術転向が功を奏し、無失点で勝ち進み選手権の出場権を得たのである。そんな勝利の鍵となった戦術の中心にいたのが東久留米総合の守備の重鎮・CBコンビ、主将の下田君と岩田君である。

 

 "最低目標として西が丘(予選準決勝会場)でプレーすることを目指す。そして、その先は全国でまず1勝をすることを目指し頑張りたいと思っている。" 

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東久留米総合5番 下田君(写真 : vs 東海大高輪台. 選手権予選決勝)

 "チームとしては3年間の集大成もありますが、自分の中では今までのサッカー人生の全てをかけて、最低でも西が丘、そして全国に勝つということが目標" 

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東久留米総合4番 岩田君(写真 : vs 草津東. 第98回選手権1回戦)

 守備の重鎮コンビは共に西が丘と選手権の勝利を目標・意気込みとして掲げている。昨年度の選手権予選で敗れた試合には主将・下田君の姿もあり、特に今回の選手権予選は思い入れがあることが伺える。その強い想いが形として姿を現したのか、選手権予選決勝では後半終了間際に持ち前の高さを活かして得点を決め選手権行きを決めた。役割は守備の重鎮だけをこなすだけでなく、チームを選手権へ導くという大仕事も担っていたのだ。無論、彼だけの力で選手権へ導いたのでなくピッチやベンチ、スタンドで応援してくれた皆の力も影響していたことは言うまでもなかろう。もう1人の重鎮である岩田君も自分のため以外にも今までサッカーをしてきて関わった人たちに感謝の意を込めて戦いと語っている。それぞれの抱えている想いが強くなりながら戦いの舞台は選手権へと移っていくのである。

以下のページから選手権予選決勝の東海大高輪台戦のダイジェストが見れます。

www.ntv.co.jp

  " 11期生の集大成. vs 草津東 "

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マッチアップする東久留米総合3番 鈴木君(写真 : vs 草津東. 第98回選手権1回戦)

 晴天に恵まれ気候にも恵まれた第1回戦。西が丘で行われた試合は観客の殆どが空色のスティックバルーンを手にして試合を見ていた。西が丘の雰囲気の殆どを自分たちのものにし試合に挑んだ東久留米総合であったが、そこにはいつもと異なる光景が1つあった。チームの主将で精神的支柱であり続けた下田君の姿がないことだ。前半8分に負傷交代を余儀なくされたのだ。capマークはもう1人の守備の重鎮である岩田君に託され。空いた位置には3番の鈴木君が入った。対戦相手である草津東は最初から飛ばしていくと言った監督・牛場氏の指示がピタリとハマり前半だけで3得点し、東久留米総合は万事休すかと思われた。3点ビハインドを負い、迎えたハーフタイム。ロッカールームの光景は名門・東久留米総合に相応しくない不穏な空気が漂っていたことを伺える話しが出ている。監督・加藤氏の脳裏にはいつかのT1での8失点が過ぎった。主将を任せられた岩田君の目には涙があった。そんな空気を打開したのが途中交代をした主将・下田君であった。檄を飛ばした後に、チームの雰囲気が一転したのである。

 

 " 集大成の始まり. 西が丘を支配した激動の後半40分間 "

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2点目を決めた東久留米総合7番 柳田君(写真 : vs 草津東. 第98回選手権1回戦)

 止まっていた電光掲示板の時間が再び動き出した。動き出したのは時間だけでなく、東久留米総合の集大成と言えるプレーである。プレースタイルが原因で主将・下田君と度々衝突をした12番の松山君。そんな彼もハーフタイムの檄に影響を受け、ここぞとばかりにFWとしても仕事を果たす。後半13分に得点しビハインドを2点差にする。この得点はただの1点ではなく、東久留米総合の集大成となる試合の始まりを意味するものである。後半24分に7番の柳田君のゴールでついに1点差にし相手を射程圏内へと定められるようになった。同点になれば流れがある東久留米総合に飲み込まれる恐れがある草津東も果敢に攻めを見せ、後半40分に10番の小酒井君が東久留米総合の3番の鈴木君を剥がしてそのままシュートを放ちチーム4点目を決める。再び万事休すと化し、そして試合終了の笛が西が丘に鳴り響いた。敗戦後の東久留米総合の雰囲気はハーフタイムのものとは一転し、清々しいものであった。振り返ると、選手権予選では粘って最後に決め切るギリギリな試合が多かった。しかし、選手権の試合は怒涛の攻めに転じてその甲斐あって後半40分間は東久留米総合が西が丘を支配していた。ロッカールームで涙をしていた岩田君も後に本当にやりたかったサッカーは、後半40分間のスタイルであったと語る。監督・加藤氏も敗戦したものの、表情は清々しいものであり試合を見ていて楽しかったと語っていた。同時に3年間の集大成も見れたことに満足であった様子が伺えた。最後までピッチに立てなかった下田君も悔いはないと語っている。それぞれの想いを抱いて臨んだ選手権の舞台。その旅は1回戦で姿を消してしまったが、選手たちの表情は空色の様な清々しさがあったのである。

 

以下のページから第98回選手権1回戦の草津東戦のダイジェスト・試合が見れます。

www.ntv.co.jp

www.ntv.co.jp

 

 

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12期・東久留米総合の主将を務める16番 五賀君(写真 : vs 草津東. 第98回選手権1回戦)

 2020年度、東久留米総合は拠点をT2に移して戦いをしていく。舞台が変われど、常に躍進し続けることに変わりはないだろう。新チームは2年生ながら選手権の舞台に立っていた16番の五賀君が主将を務める。先輩たちの集大成のピースの一部にもなっていた彼は従来の胸に刻み込まれた決意に加え選手権の経験が融合しまた新しいものをチームに齎すであろう。2020年も東久留米総合の躍進には目が離せないものとなりそうだ。

  

" 番外編・東久留米総合の魅力3選 " 

ここでは番外編として東久留米総合の魅力を項目別に3つ紹介していく。

①応援部隊

 記事内で何度も記載しているが、東久留米総合サッカー部は230人も部員がいる。当然ながら全員が公式戦等の試合に出れるとは限らない。しかしながら、出れない選手も一丸となって応援部隊というポジションでピッチに立つ選手と共に戦い続けているのである。部員が多いため、応援の圧は凄まじいものであり迫力のある応援で味方を鼓舞しつつ対戦相手にとって脅威とも感じさせるものである。私自身、昨年度は多くの高校の試合を見て来たが東久留米総合の応援部隊は東京都のどこよりも別格であり、全国でも1.2を争う程のものだと私は感じている。当記事の序盤に私が東久留米総合の試合を見ている場所について記載したが、それを敢えて説明している理由として応援部隊の圧を間近で見て見たかったからという意味合いがある。

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東久留米総合 応援部隊(写真 : vs 関東第一. 選手権予選準決勝)

 さらに東久留米総合には応援部隊の最終兵器も揃えている。その正体は応援団長の井上君だ。  

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東久留米総合 応援団長・井上君

応援団長の井上君も。彼も東久留米総合サッカー部の選手でもある。彼の応援は終始声を切らさず己の声帯が擦り切れてしまうのではないかと思わせんばかりのものである。常に先頭に立ち仕切ったりし、選手権予選決勝の会場である駒沢陸上競技場では手すりギリギリまで目一杯身体を入れてあわやスタンド内でのオフサイドにかかってしまう程のものであった。そんな井上君についての記事もネット上にあるので是非、彼に興味を抱いた方は下記のページから見て欲しい。

yansaka.com

 圧巻の応援部隊と団長・井上君という応援を兼ね揃えていながらもさらに東久留米総合は武器を持っている。それは「チャンピオンロード」という曲である。 この曲はピッチ上に立つ選手に想い・力をより倍増させてしまう程の魔力がある。そんな魔力を使いこなせるのは恐らくではあるが東久留米総合だけだと思われるため他校で使うには魔力を使いこなす練習から入らなければならないと思う。この曲に興味を抱いた方は下記のページから開いて是非、聴いてみて欲しい。

www.ntv.co.jp

 

 SNS

ここまで当記事を読んでくださった方の中には恐らく東久留米総合に少しは興味を抱いた方もいるかと思われる。該当する方がいれば是非、東久留米総合の公式HPを見て頂きたい。世相はSNSを見る人の数が圧倒的に多いものであり、それに伴いSNS上の宣伝効果というのは計り知れないものかと思われる。東久留米総合以外にも名門校は存在するものの何故かSNSを有効活用できていない印象がある。そんな中で群を抜いて、常に怠らず公式HPを更新する運営の裏方業務に賞賛したいところである。興味を抱いた方以外にも是非、1度はその公式HPを閲覧して欲しい。

公式HP: https://kurume-football.net/

Twitterhttps://twitter.com/kurume_football

 

 ③女子サッカー

 名門・東久留米総合と言われているのは男子だけでなく、女子もそう呼ばれる程実績がある。現に所属している東京都JKリーグは東京都1部相当であり、女子の全国常連校である十文字や修徳と同じ所属先でもある。その他にも関東大会出場や1型スポーツ特別強化校(優秀な競技実績の継続)に指定されるといったものがある。彼女たちの躍進にも目が離せないものである。

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東久留米総合・女子サッカー

 

 

最後に東久留米総合の2020年度の直近で行われる試合日程を記載する。

コロナウイルスの影響にて一部、詳細未定な試合や試合延期の可能性もあります

2020年4月19日. 10:00 : vs 都立紅葉川. in都立東久留米G (関東大会予選 1回戦)

    → 1回戦の中止に伴い関東大会及び予選は中止が決定しました

・2020年4月29日. 12:30 : vs 東海大高輪台. in東海大高輪台総合G (T2 第2節)

・2020年5月3日. 10:00 : vs 三菱養和SCユース B. in都立東久留米G (T2 第3節)

・2020年5月9日. 17:00 : vs 都立府中東. in都立東久留米G (T4・A 第2節)

・2020年5月30日. 18:30 : vs 早稲田実業. in早稲田東伏見G (T2 第4節)

・2020年5月31日. 15:30 : vs 東海大高輪台 B. in都立東久留米G (T4・A 第3節)

※東京都JKリーグの日程は現在出ていないため、女子の試合日程は記載しておりません。

 

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引用 : 

headlines.yahoo.co.jp

 

文章・写真 : 荒井 敬介